信州の“おもてなし”Blog

2024.06.10

飽くなき好奇心で突き進む。 見た目よし、食べてよしの野菜

私たちのレストランでは“信州フレンチ”と称するコース料理をご用意しています。信州各地の生産者の方々にご協力いただきながら、季節ごとの旬で新鮮な食材をシェフの感性と技術でストーリーを紡ぐように調理しています。ここでしか出合えない料理を演出してくれる食材のなかで、特に個性的なものを提供してくれるのが農家の齋藤敏男さんです。

-地域性を色濃く表現する野菜料理「ガルグイユ」

信州野菜のガルグイユというテーマで提供している料理。ガルグイユとはフランスの三つ星レストランのオーナーシェフ、ミッシェル・ブラスの代表料理のひとつで、彼のオーベルジュがある地方の郷土料理をアレンジしたものです。数十種類の野菜などを少しずつ盛り付けた、絵画のように美しい野菜料理。Restaurant溪がある地域も、周辺にはたくさんの魅力あふれる、おいしい野菜を生産する農家さんが多いことから、この土地の個性あふれる旬で新鮮な野菜を吟味し、信州野菜のガルグイユとして提供しています。

なかでも生産する人が少ない、珍しい野菜を中心に生産しているのが、上田市平井地区の齋藤敏男さんです。元は老舗の食品製造会社に勤めていましたが、退職して時間ができるようになり、野菜の栽培を始めました。

「新しいものが大好きで興味を持ったら試してみたくなる性格です。せっかくやるなら、自分が興味を持った珍しい野菜をつくる農場にしてみようと考えたんです。自分の中では実験農場というスタンスで、最初に栽培を始めたのがアーティチョークでした」

アーティチョークは和名でチョウセンアザミと呼ばれている多年草です。日本ではまだなじみが薄いですが、ヨーロッパでは割と身近な食材で春野菜として使われています。開花前のふくらんだつぼみのうちに収穫し、やわらかなガクのつけ根部分と花托(かたく)を食します。

「アーティチョークを栽培している畑は、もとは石だらけで水分が多く、冬は凍結する環境でした。そこで土壌改良を行いながら栽培をし始め、2年目から実をつけました。野菜の適性を見極めながら育てています」

実ったアーティチョークは生産者が少ないこともあって、納得のいく価格で販売できているといいます。

-愛らしいちいさなキュウリ、その味わいは個性豊か

そして、Restaurant溪でも提供している野菜の1つマイクロキュウリも齋藤さんが手がけたもの。メキシコ原産のマイクロキュウリは実の大きさが2cmほどと小さく、表面にはスイカの模様に似たグラデーションが入っています。皮は歯応えがある少しかため、中はみずみずしく酸味があり、種のプチプチとした食感が混ざり合って、ちいさな一粒の中に幾重にも個性ある食感と味わいが楽しめます。

「好奇心の赴くままに現在は50品種ほどの野菜を育てていますが、成長した姿もどれも個性的。飽きることはありません。どんな野菜を栽培するかの基準は、先ほども話したように珍しいもの。そして色があるものです。葉ものにしても緑ではなく黒や紫といったように盛り付ける際にアクセントとなるような色使い。そして見栄えがするものです」

こだわりは、それだけではありません。可能な限り農薬は使わないというポリシーのもと、無農薬栽培を目指しています。

-1つでも休耕田が減ることを願って

自分自身が楽しいと思いながら栽培できる品種を選ぶ。この考え方は、どんな仕事にも通じるもの。他者の言動にふりまわされずに自分軸でいることの大切さを、齋藤さんの野菜への向き合い方から感じ取れます。

そんな齋藤さんにも、近年気にかけていることがあります。それは高齢化や農業従事者の減少によって休耕田が増加していることです。

「現代は、人生100年時代なんて謳われたりしています。高齢者と呼ばれる世代でも心身ともに健康な人は多く、そういった人たちでも栽培できて小規模でも売上が立つものは何かと考えています。もしかしたらアーティチョークは、その1つになり得るかもしれません」

そのため現在、アーティチョークの生産規模を拡大している最中だといいます。地元住民と協力し合いながら魅力あふれる野菜が生産されるようになったら、それが地域の個性へとつながっていくはずです。

齋藤 敏男
住所 上田市平井896
電話 080-5109-5229

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