信州の“おもてなし”Blog

2023.12.26

ハンター歴30年のプロが生み出す 鹿の命を無駄にしない食肉

「Restaurant溪」で提供しているメイン料理は、信州の豊かな自然環境と山の恵みで育った鹿肉です。食事をされた方の多くがおどろく味わいの良さ。提供している食肉加工業・総合マネージメントコンタの近藤重さんにお話を伺いました。

-安心・安全、鮮度が高い鹿肉を提供するために

自然豊かな長野県には、多くの野生動物がのびのびと生息しています。一方で、野生動物による農作物などへの被害が増えているという現状も抱えています。そこで行われているのが適正な個体数にするための駆除です。近年では駆除対象になっている野生動物を食肉として有効活用し、地域振興に役立てようと信州ジビエ研究会が発足され、「ジビエといえば信州」を目指してさまざまな活動を行われています。
Restaurant溪で提供している鹿肉はすべて、茅野市にある食肉加工業・総合マネージメントコンタから仕入れています。ここでは「信州ジビエ衛生管理ガイドライン」などさまざまな厳しい基準を満たした、おいしくて、安心・安全な鹿肉を加工・販売しています。

「おいしい鹿肉を提供するには、鮮度が大切だって考えています。総合マネージメントコンタは長野県で1、2台しかない専用のジビエカーを所有しているのが大きな特徴です。車内には冷凍庫をはじめ水道や次亜塩素の設備が付いた特殊車両になっているんです」

この特殊車両で仕留めた動物をすぐに回収。内臓を取り出し、剥皮をして、洗浄をして、冷蔵庫へ入れて加工場まで搬送。こうして高い鮮度を保つことができるのです。

-ジビエ初体験の人も満足できる味を求めて

ミディアムレアに焼き上げた鹿肉は、ボルドーワインを思わせる品のある色合いです。ナイフを入れると、やわらかさとしっとりとした感触があり、噛むほどに肉の味が増していきます。多くの人が抱く鹿肉の味といえば、野生味を感じる独特の香りではないでしょうか。

「でもね、ジビエ特有の香りこそジビエだと言う人もいるんですよ。結局は好みなので、料理長がどんな味にしたいかに尽きるんじゃないかな」

たしかにジビエに対する評価はさまざまです。Restaurant溪では、ジビエに馴染みがない人にもおいしく味わってもらいたい。そんな思いを込めて癖が少なく、味わいの良さが際立つ鹿肉を厳選しています。

-「一族がみんなハンター」という家系に生まれて

近藤さんの家系は代々ハンターで、幼少期から親に連れられて山に行き、狩猟の様子を見て育ったといいます。それもあって自身もハンターになるのが自然な流れだったとか。

「初めて鹿を仕留めたのは20歳のとき。狩猟のスタイルもいろいろあるけれど、僕は銃を使います。狙うのはネックショットのみ。ほかだと撃った瞬間に走ってしまうんですよ。そうすると体温は上がるし放血してしまうしで状態が悪くなってしまうんです」

銃によっても弾道は異なるので、日頃から射撃場で練習を重ねるといいます。

-仕留めた鹿に最後まで責任を持つ

もしかしたら、このような話題を悲観的に捉える人もいるかもしれません。しかし時代を遡れば自分で狩猟し、捌き、いただくことが日常でした。現在ではそういったものが見えづらくなっていますが、私たちが普段スーパーで見かける食肉も誰かが代わりにしてくれていることを忘れてはいけません。

「正直に言えば、野生動物を害獣として駆除しなくてはいけないというのは人間の都合なんですよ。だからね、私たちが心がけているのは無駄な殺生をしないこと。最後まで責任を持ってその命を大切に扱い、いただけるようにしてあげたい。うちはちっぽけな工場だけど、自分たちが食べたときにおいしいと感じるものを提供したいという思いは強い。自分が臭いと思った肉は他の人も臭いよね。そういう基本的な点を怠らずに適切な処理を施して、鮮度が良くてクオリティの高い商品にしています」

一つ一つの料理にさまざまないのちと思いがあることに気づかせてくれた今回のインタビュー。あらためて「いただきます」という言葉をきちんと言おうと思えた時間でもありました。近藤さんこだわりの鮮度が高く、味わいの良い鹿肉を、ぜひRestaurant溪でご賞味ください。

総合マネージメントコンタ
住所 長野県茅野市米沢69-1
電話 0265-55-9105

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